腎臓病の現代医学治療

腎臓病と現代医学治療(現代医学)

(1)腎臓病の治療

現在、腎臓病に対する特効薬はなく、基本的には食事療法と薬物療法であり、その目的は腎不全への移行を遅らせるためのものです。薬物療法の中心はステロイド薬(初期腎炎)であり、その他、免疫抑制剤、利尿薬、降圧薬等があります。
また、長期にわたるステロイド剤治療の副作用として、以下のものがあります。
満月様顔貌、皮膚線条、体重増加、高血圧、消化管潰瘍、糖尿病、重症感染症、骨粗鬆症、ミオパチー、下垂体腹腎機能抑制などが挙げられます。

日本における慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)の現状

日本では成人の10人に1人(約1300万人)が慢性腎臓病を患っている危険性があるといわれ、慢性腎臓病が原因となる心血管病により、2015年までに世界で3600万人が死亡すると予想されている。そして、全ての腎臓病の終末像が腎不全となります。

※参照 2008年日本腎臓学会発表

(2)日本における腎不全の現状

腎不全とは病名ではなく、腎機能(糸球体ろ過量)が50%以下になったものをいい(おおむねクレアチニン値が2.0以上)、その機能が10%未満になると末期腎不全と呼びます。放置すれば、尿毒症等により死亡します。
治療法は腎移植か人工透析以外にはありません。

腎不全は、2006年度の我が国の死亡率第8位です。
その根本治療は腎移植しかなく、腎移植をしなければ透析は一生涯続けなければならなくなります。現在、日本の透析患者数は約30万人で(全人口比:440人に1人)、毎年1万人増加しています。この透析に要する我が国の医療費は、約1兆2000億円です。
また、透析を開始してもその合併症は多く、10年生存率は約42%。5年生存率は約60%といわれています。主な合併症としては、1.高血圧2.腎性貧血3.免疫不全4.糖・脂質・蛋白代謝異常5.内分泌異常6.副甲状腺機能亢進症7.心機能障害8.動脈硬化9.アミロイドーシス10.免疫不全11.腎癌などがあります。
透析を止めるには、現代の医学では腎移植しか存在しませんがここ数年我が国における移植数は年間約200例前後であり、アメリカの15%程度しかありません。

※参照 社団法人日本透析医学会

(3)腎代替療法

①腹膜透析の問題点

透析患者の約5%が腹膜透析をされています。
腹膜透析(PD)には2種類あり、APD(自宅中心)とCAPD(自宅と職場)がありますが、
血液透析に比べ、拘束時間も短く、肉体的、精神的苦痛は少ないといわれています。

しかし、管理が甘いと腹膜炎をおこしやすく、通常5年程度で血液透析に移行しなければなりません。
さらに、合併症の存在を決して忘れてはならないと思います。
それが、全腹膜透析患者の約1%が併発する被嚢性腹膜硬化症(EPS)です。
アメリカでは日本のように国民皆保険制度ではないため、主に腹膜透析が導入されています。故に、10年生存率は約20%程度と言われています。

②人工透析・血液透析の問題点

人工透析の導入が決定すると、人工透析用のシャントを作製します。これは、皮下で静脈と動脈を吻合するものです。数年置きにシャントは作り直していきます。(別の個所で) そして、ダイアライザーという機械を通して血液を濾過していきます。
これが、1週間に3回、1回4時間が平均です。1週間休んでしまうと、重篤な危機に陥ってしまいます。2011年3月の東日本大震災により、被災地だけではなく、関東地方でも計画停電の影響で透析の患者さんは大変だったと聞いております。

ダイアライザーという機械も年々進化しており、透析導入後の余命も長くなっている模様です。
5年生存率・・・・約60%    10年生存率・・・約42%
以下に記すものが、血液透析中に起こりやすい合併症となります。

  • 血管系合併症
  • 高血圧・低血圧
  • 腎性骨異栄養症
  • 腎性貧血
  • 感染症
  • 動脈硬化
  • 栄養障害
  • その他

③腎臓移植

多くの人の勘違いに、腎臓を移植すれば一生そのまま腎臓は定着するということがあります。
実はそうではありません。
兄弟間の移植が最も長く生着するそうですが、やはり10~15年くらいでしょうか。
親子間ではやや短くなります。他人の献腎では、5年前後と思っていた方がよいでしょう。

下記のデーターは一般社団法人日本移植学会のものです

移植腎生着率
生体腎移植・・・・・1年93.4%、5年81.7%、10年65.6%、15年51.8%、20年40.3%
献腎移植・・・・・・1年82.8%、5年65.8%、10年50.2%、15年38.8%、20年31.1%

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